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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2795号 判決 1979年3月27日

控訴人

森山弥太郎

被控訴人

麻生台住宅管理組合

右代表者

広瀬剛太郎

右訴訟代理人

児嶋初子

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当事者間に争いのないところであるが、被控訴人である麻生台住宅管理組合は、訴外日本住宅公団が川崎市多摩区下麻生地区に建設した麻生台分譲住宅団地の住宅総数九四七戸につき、右公団より各住宅の分譲を受けその所有権を取得して入居する者が共有物を管理し、かつ分譲住宅及び右共有物の使用に伴う居住者の共同利益の維持増進をはかることを目的として、右入居者全員を組合員として組織構成され、建物の区分所有等に関する法律(昭和三七年法律第六九号)の規定に基づき設定された組合規約によつて管理運営されるものであつて、最高意思決定機関として総会をもち、理事会が執行機関としてその業務を行い、理事長がこれを代表する定めのある団体である。

以上の事実関係によれば、被控訴人組合は代表者のある社団であるということができるが、法人格を有するものと認めるべき証拠はない。

しかして、控訴人は前記訴外公団より右団地の一戸につき分譲を受けて現にこれを所有し、これに居住している者であつて、被控訴人組合の組合員であることも、当事者間に争いがない。

二控訴人の本件訴は、被控訴人組合の組合員として昭和五二年五月二二日同市多摩区東柿生小学校体育館において開催された同組合第七回通常総会における原判決別紙目録記載の決議につき手続上の瑕疵を理由に右総会決議の取消しを求めるものであつて、控訴人は、その根拠として被控訴人組合の総会決議に商法第二四七条の類推適用があることを主張する。

三そこで、まず、被控訴人組合の総会決議に右商法の規定が類推適用されうるかどうかについて検討するが、当裁判所も、原審と同じくこれを消極に解せざるをえないから、この点に関する原審の説示をすべてここに引用する。なお、被控訴人組合が法律の規定に基づいて設定された規約によつて管理運営される<証拠>によれば、右規約によつて組合員の資格は前示分譲住宅を所有することによつて当然取得され、組合員が右分譲住宅を他に譲渡すれば同規約に基づく組合員としての権利義務の一切が譲受人に承継されるものと定められていることが認められるから、これらの点からすれば、被控訴人組合は相当高度の社団性を有するものということができるけれども、これらの点を考慮に入れても、その総会決議の手続及び内容の瑕疵の是正が団体の内部規約に定めるところによる団体の自治に委ねられることをもつて十分とし、取消訴訟による法的規制を加える必要を認めなければならないものとは考えられない。

そうすると、本件総会決議に商法二四七条の規定を類推適用することはできないものといわなければならないから、その類推適用を前提とする本訴提起は不適法として許されないものである。<以下、省略>

(安倍正三 長久保武 加藤一隆)

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